2013年3月16日土曜日

露製1つ目小僧 SMZ-S1L (СМЗ-С1Л)

◆ ソ連の超小型車SMZ-S1L

SMZという見慣れないメーカー名を知ったのは20年ほど昔、世界のキャビンスクーターをまとめた洋書を買った時でした(Kleinwagen international )。掲載されていた四輪車SMZ-S3Aの写真は、キューベルワーゲンの代燃車をチョロQ化したかのような端正?なスタイルで強い印象を残したものです。

ああ...それなのに、このSMZの三輪車S1Lとなるとまるで記憶にございません。あの大冊にも載っていなかったのか、ヘンテコ揃いのキャビンスクーター本では逆に埋もれてしまったのか分かりませんが、まぁそんな事はともかくとして、コイツは余程のマイクロカー・マニアでなければ知らない車でありましょう。

 SMZ-S1L (СМЗ-С1Л) 1/43
裏ワザ: ライトを指で隠して見ると
でんでん虫な車幅灯がジワジワくるよ
SMZ、ソ連らしく3文字の略称です。正式名称は「セルプホフ・オートバイ工場」くらいの意味で、現在でもモスクワの南部セルプホフの地で、社名をSeAZと名を変えながら、小型乗用車VAZ- 1111 「Oka」 の生産工場の一つとして操業しているようです。

ちょっと調べますと、四輪のS3A型はソ連時代に主に身体障害者向け車両として生産されたそうなので、この三輪車S1L型も含めたSMZの超小型車は皆そういう役割だったのでしょう。そのため個人登録(?)が基本的に出来なかったとかで現存車は少ないらしいです。この3輪車系はエンジン等いくつか変更を加えたS3Lまで含めて1952から58年頃まで生産、四輪へとバトンタッチしています。


◆ 東側のミニカー

ロシアのディアゴスティーニがミニカー付き雑誌、「ソ連の自動車伝説」を2009年から隔週で刊行し、現在も絶賛継続中なので、いつの間にやら濃いめのミニカーが倍増していました。個人的にはこの調子で「チェコ・スロバキアの自動車」なんて始まったらヤバすぎると本気で恐れています(笑)

また雑誌物ではありませんが、レジン製の限定品ミニカーでは超ゲテモノのZIL-29061(アルキメディアンスクリュー推進!)などが昨年発売されているので、私が知らないだけで旧東側のミニカーがここ最近は熱いのかもしれません。
テールライトはカブトガニの目を連想してしまった。
それ以来、海底にいる何かに見えてしまう。
今回のコレはディアゴスティーニの物で、SMZはこのS1Lだけではなく、4輪の「丸っこいS3A」と「角々のS3D」の計3種も出ているあたり素晴らしいです。そちらもいずれ入手したいものです。

嬉しい事に、本体(?)の15ページの冊子は、当該車種の記事だけで編集された資料性の高い物で、ちゃんと取材して撮られたカラー写真を観るだけでも満足感が得られる物でした。特にマイナー車種に関しては唯一無二の資料になるのではないでしょうか。あとはロシア語の本文が読めれば最高なんですが・・・。

という事で、もし冊子と一緒に入手出来たならば、例え中国からの流出ミニカーが安く売られていても損した気分にならないかもしれません。


◆ 1目、2座、3輪、乗用車・・・

実はかなり珍しい形態の車です。この条件に当てはまるのはキャビンスクーターの一部しか思い浮かびません。手持ちのミニカー3台を集めてみると、皆さん妖怪っぽいのがなんとも(笑) 

フジキャビン SMZ-S1L プジョーVLV
三匹の妖怪 
友情出演、フランスのプジョーVLV(1941)日本のフジキャビン(1955)
もともと、ソ連、日本、フランスの作る車は、それぞれ違った意味で「美的感覚の特殊さ」が見えたりするのですが、この3台からそのお国柄を見出す事には注意が必要かもしれません。何故ならその国を代表するどころか、その国内でも異端中の異端なのですから(笑)

でも、少なくともSMZの色、本体のグリーングレーとライトの黒にはソ連らしさを見て取れますね。


なお、超小型車の場合は他の2車のように、スペース効率やコストの面からスクーターに類するメカで後1輪化するのが普通ですが、SMZの場合は、スイング式のドライブシャフトを使った後2輪で、つまり、ユニバーサルジョイントを4個使用した当時としては贅沢な足回りになっています。

しかも、サスペンションは左右それぞれに2本の(太さが違うようにも見える)コイルスプリングが使われ、(断定はできませんが)左右ハブ間はチューブで繋がれている様子なので一種のド・ディオンアクスルらしいのです逆から見た画像をネットで発見して分かりましたが、Aアームによる独立懸架なのでした・・・まるでスポーツカーか何か?という構成ですが、まぁ、写真で見ると安っぽさ満開で、小さすぎて自動車部品を流用できない事と、小ささゆえに強度はそこそこで採用できたというメカニズムなのかもしれません。

海底を徘徊中、ダボハゼが来て
こっそり逃げる何かの赤ちゃん

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ソ連(ロシア)の自動車は、コピーなのかライセンス生産なのか、西側と同じ様な真っ当なデザインが意外と多い一方で、兵器などと同様に、荒削りなデザインもチラリと顔を覗かせます。足りないのは、美しいとか格好良いとかいう「華やかさ」(頽廃的?)でしょうか。

そんな中で、しかも大きい車が多いソ連で、ヘンテコで小さく可愛い(キモカワ)のSMZは、独特な魅力を持った貴重な存在といえるでしょう。


ついでに動画にしてみました。宜しければ360度、可愛い姿を御覧ください(笑)



続編