2024年1月27日土曜日

銃型軽量文鎮

 当ブログのネタとしては場違い感はありますが、放置状態も久しいのでもういいでしょう。私が制作した「軽量文鎮」銃模型の一部を紹介してみます。

前説:ブリーチについて…

カートリッジ式の銃は弾丸を装填した後に薬莢の尻を押さえる(閉鎖する)必要がありますが、稀にその押さえ部品「ブリーチブロック(閉鎖器)」の無い銃が存在しました。そんな珍しい銃をウエスタンデリンジャーを中心に。

なお、銃部品の厳密な用語は分からんのです。雰囲気で察してくださいまし。

造形的な事は後述。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

レミントン・エリオット・シングルショット・デリンジャー

レミントン エリオット シングルショット  有名なダブルバレルデリンジャーの設計者ウイリアム・エリオットによる単発デリンジャー。 1867ー1888

 ダブルバレルもシングルショットもグリップ前縁の曲線はほぼ同じで握りやすいです。どちらも他社にはない抜群のデザインと思います。

 スタイルだけでなく、41口径という大口径では極めて珍しいブリーチブロック(薬莢を押さえる閉鎖部品)が無い独特な機構の銃です。

 発砲時に「後退する薬莢」を「後退しないハンマー」で受け止めれば単体のブリーチブロックは要らないのでは?という机上の空論が実体化した感じで、大丈夫か?と思ってしまいます。

レミントン エリオット シングルショットハンマーの回転軸を後方に置くとハンマーノーズの動きは上下動に近くなり、薬莢の後退に付き合わずに受け止めるられるという理屈です。仕組み上、完全閉鎖は出来ないので、「飛び出した薬莢をハンマーにぶつける」形になっています

万一ハンマーが戻ろうとしてもオートマチック銃のジャムみたいに薬莢が引っかかります。それでいて意外と装填と排莢はしやすいとか、作ってみての気づきが多かったです。

発砲の衝撃をハンマーが直接的に受ける為にハンマーピンが極太なのも個人的に萌えポイント・・・ってな事を書いていて、ハンマーピンが衝撃を一手に引き受ける云々はフロベルの室内射的銃にも存在した記憶が。詳細は不明ですが、もしかするとアイデアは有ったけれど普及しなかった感じかもしれません。(1作目)

 

レミントン ベストポケット ピストル No.1

レミントン ベストポケット ピストル No.1これもブリーチブロックなしですが、上記のエリオットとは真逆でハンマー回転軸が前方にあるため「下から上にアッパーで叩くハンマー」構造です。

もっともこっちの方が前に出たモデルですけど。

  洋ノコギリに似ている事から「ソーハンドル」の通称で有名なシリーズです。実はこれもエリオットさんのシングルショットなので外観を表す通称の方が好ましいです。

 ソーハンドルには3サイズがあり、ブリーチブロックが無いのはこの最小の22口径モデルだけで、他はレミントン得意の「ローリングブロック」を採用しています。

実のところ41口径のNo.3あたりを「デリンジャーにローリングブロックを組み込んだ例」として手にしたかったと少々後悔していて、いずれ作りたいと思ってます。(14作目)


J.C. テリーの特許出願中デリンジャー

J.C. テリーの特許出願中デリンジャー  基本的には上記ソーハンドルNo.1のパクリと思います。現代のブルパップ式ライフルに似てコンパクトでありながら銃身長を稼げるデザインではあります。そして同じくSF的な奇妙さもあります。

 特徴は後退した薬莢が引っかかる工夫であろうハンマー正面に3本の溝が掘ってある事くらいでしょうか。うーん、それで特許を出願したのでしょうかね。

 で、J.C. テリーさんって誰?ってな感じの無名メーカーの割には現存数は多い印象ですが、「特許出願中」の刻印が「特許取得日」に変わった様子はありません。

模型はソーハンドルと同じくハンマーのみ稼働、この仕組みでバネ無しにするとハンマーが自然に落ちてくるのが悩み。(2作目)

 

アイバー・ジョンソン ジェム

アイバージョンソン ジェム gem  これまたブリーチ無し繋がりですが、実弾を発射出来ないブランクピストル=空砲銃でして、大きな反動は無いため普通のハンマー構造で済んでいます(ハンマーピンがハンマーの下にある)。

 西部劇でSAA等を空に向けてヒャッハーと撃ちまくるシーンがありますが、祝賀用途で爆竹みたいに実銃を使うのは問題あるので次第に空砲銃が売られるようになったようです。

これは1890年代の西部開拓時代終焉頃の製品で、何となく室内での使用を意識したデザインっぽく感じます。オーナーの中には.22ショートの実弾を発射するように改造して事故を起こす例も多かったそう。 シンプルな全くの無可動モデルとして作り4丁一気に作りました。(3作目)

 

ボス ブランクピストル

ボス  ブリーチなしブランクガン繋がりで謎の銃「ボス」を。どうも宝石卸商が配布云々の解説があるので顧客むけのオマケ的な物かもしれません。S&Wのホーレス・スミスの息子が製造したそう。1870年代。

 見ての通り普段はトリガーがなく、ハンマーコック状態でトリガーが露出するタイプですが、一部の古式銃やテキサスパターソン的な飛び出すギミックではない様です。

 どうやらハンマーとトリガーが一体部品!で、シーソー型の電源スイッチみたいにパチンパチンとどちらか交互に弾く感じなのかと想像します。内部構造は分かりませんがトリガー兼ハンマー、ピン、バネの部品3点だけで済みそうなシステムです。

フォルムも独特ですが、独立記念日の祝賀用なのか1776(アメリカ独立年) の刻印は有るもののシリアルナンバーがないという妙な銃です。

 曲面構成の微妙なラインなのでCADで基本形を作り出力品を手作業で形を整えました。同じ物は作れません。(8作目)

 

レミントン・ライダー・マガジン・ピストル

レミントン ライダーマガジン ピストル デリンジャーサイズでありながらチューブマガジンの連発銃という脅威のメカニズム、しかもローリングブロックの応用的なレバーアクションの組み合わせです。

また、弾丸の.32エクストラショートはパームピストル「プロテクター」とコレしか採用していないという何重にも興味深いモデルです。ジョセフ・ライダーの設計、1871~1888年製造。

 上部の大小のレバーはブリーチブロック(大)とハンマー(小)で、大きいレバーを(大小一緒に)引いてハンマーコック、大きいレバーを戻して閉鎖します。この操作で同時にマガジンからの装填と排莢も行っているわけです。

このブリーチブロックはハンマーと同軸なので本来のローリングブロックとは違い、レバーを引く際に上から押し下げでロック解除する仕組みになっているようです。普通のハンマースパーなんかと形が違うのは押しつける用途が有るからなんですね。

とにかく精密機械的で正直全てを理解出来ていません。機構的に面白いのでハートフォードさんあたりに期待したいけれどモデルガン化はコスト的に無理でしょうね。(10作目)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 いずれも3Dプリントを活用したフルスクラッチです。

全て機関部分がムクの無可動ディスプレイモデルなので発火機能も発射機能もありません。素材はUVレジンで脆い物です。銃口は見える位置で閉塞されています。

設計のCADはRhino7、3DプリンタはMars2、レジンは主にsiraya-tech fastを使用しています。

XYが0.05ミリの古いマシンでも刻印等の細かいディテールは意外と出るのですが、銃身等の微妙なテーパーでは段差が気になるので最新マシンが欲しいところ。


 このところSNSも控えて黙々と20種以上作ったので専用のブログでも作ろうかとも思いつつ、今は「発表を前提としない模型作りが楽しい」域に入っているので悩ましいところ。

で、今回はダイジェスト的に書いてみました。

 

2019年9月25日水曜日

イセキ TR-1S (続)

 随分前になりますが小さすぎるポルシェ型【ヰセキTR-1】と題した記事を書きました。
その後も少々補足を加えたりしてましたが、今回は別立ての記事にしてみます。

なぜならTR-1とTR-1“S”の最大の違いを見逃していたのです。アホですね。


こちらはポルシェ型の乗用耕耘機「TR-1」の後期バージョン「TR-1S」で、前の記事(2013年12月)の直後、2014年に【とかち農機具歴史館】に追加された当時の画像です。

まるでブログに呼応したようなタイミングで登場したため勝手に親しみを感じていましたが、5年経った今年(2019年8月)某日に行くと・・・なんと!


 ・・・カウルを開けて展示していました!わお!見たかったヤツ!

実は、某オークションで妙なエンジンのTR-1を見てしまって以来、オリジナルのエンジンが見たかったのですが、またしても良いタイミングで見せてくれました。

私は展示物に座ったり触れたりしない主義(※)なので、こういう展示は助かります。ただし、初見の人には微妙すぎる展示方法ですね(笑)

※)展示物に触らないのは当たり前ですが、「農機に自信あり」みたいな人がガチャガチャ乱暴に触るので困る、と某所で聞きました。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 見るべきはエンジン! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆

さて、こちらは前回のTR-1(無印)、エンジンは一見すると単体売りのG10A農発そのままに見えますが、作業灯が省かれたり調整が違ったりする車載専用型と思われます。
資料によると後のTR-1Sと同じくG10Tという形式名らしいです。
(ああ、社員の方と結構話したのに当時はカウル開けてもらう発想がなかった)


 一方、こちらはTR-1Sのエンジン。なんと外装カバー自体が省かれて存在しません!なので、燃料タンク、コンデンサー冷却器まわりの「内臓」が丸見えです。

 さらに、エンジン前部タンク下あたりがゴチャっと具が詰まっています!なんと、セルモーターやリレーが追加されているのでした!

ハイ!これはつまり、手回し始動のTR-1、セルスターター式のTR-1S、という大きな差異があったという事ですね。気づかなかった・・・


吸気系では、エアクリーナーが外に追いやられたのはバッテリーを積むためと分かりました。また、始動時の作法が若干違う事から少なくともキャブに微細な変更があり、もしかすると本体にもセル始動を前提としたチューニングがされているかもと妄想してしまいます。

 発電系は、元々が作業灯付きの農発なので最初からフライホイールマグネトーを装備、それなりに強化されているかもしれませんが外からは分かりません。

 燃料タンク自体は従来からの「内臓」そのままと思いますがどうでしょう。タンク内がどう仕切られているか分かりませんが、前部キャップに灯油、後部キャップにガソリンの文字がプレスされています。

フライホイール外周のカバーには、セルモーター用の丸い膨らみがぷっくりと追加されています。

佐藤造機
 同様の処理はサトー(佐藤造機)でも見られ、同じくエアクリーナーも外出しなので、この仕様のエンジンもまるごと三菱「かつら」側で設定し供給した物なのでしょう。
いやぁ~TR-1Sでは絶妙にカウルで隠れるので何年も気づきませんでした。

 あと、計器なし計器盤(?)だったTR-1から刷新されてTR-1Sでは回転計と電流計が装備されています。遠くから見分ける際の一番のポイントかもしれません。

・・・・という事です。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ついでに ◆◆◆◆◆◆◆◆◆

上記TR-1Sの初見は、2014年国際農業機械展を見に行った時のオマケでした。
翌日、その会場に行くと井関農機の展示場にこんな大きなパネルがありました。
これはパネルの一部ですが、TR-1が一番大きいじゃないですか!?
2014年は何故か急にTR-1にブームが訪れた!ってな感じがしたものです。

TR-1
当該部アップ。普通こういう工場写真は生産極初期の資料として貴重だったりします。で、この写真のTR-1に形状的な特徴は・・・とくに無い気がしますが、菱形3つの「ヰセキ」マークになってます。ああ、海外仕様が「ISEKI」ロゴなだけなのかな・・・

初のイセキ製4輪トラクターであるTC-10ではイロイロ細部に変化があって興味深いのだけれど、TR-1では既に手慣れた感じといったところですかね。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 以上で終わり。また何か気づいたら追記するかもしれません。

関連リンク
小さすぎるポルシェ型【ヰセキTR-1】