2019年9月25日水曜日

イセキ TR-1S (続)

 随分前になりますが小さすぎるポルシェ型【ヰセキTR-1】と題した記事を書きました。
その後も少々補足を加えたりしてましたが、今回は別立ての記事にしてみます。

なぜならTR-1とTR-1“S”の最大の違いを見逃していたのです。アホですね。


こちらはポルシェ型の乗用耕耘機「TR-1」の後期バージョン「TR-1S」で、前の記事(2013年12月)の直後、2014年に【とかち農機具歴史館】に追加された当時の画像です。

まるでブログに呼応したようなタイミングで登場したため勝手に親しみを感じていましたが、5年経った今年(2019年8月)某日に行くと・・・なんと!


 ・・・カウルを開けて展示していました!わお!見たかったヤツ!

実は、某オークションで妙なエンジンのTR-1を見てしまって以来、オリジナルのエンジンが見たかったのですが、またしても良いタイミングで見せてくれました。

私は展示物に座ったり触れたりしない主義(※)なので、こういう展示は助かります。ただし、初見の人には微妙すぎる展示方法ですね(笑)

※)展示物に触らないのは当たり前ですが、「農機に自信あり」みたいな人がガチャガチャ乱暴に触るので困る、と某所で聞きました。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 見るべきはエンジン! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆

さて、こちらは前回のTR-1(無印)、エンジンは一見すると単体売りのG10A農発そのままに見えますが、作業灯が省かれたり調整が違ったりする車載専用型と思われます。
資料によると後のTR-1Sと同じくG10Tという形式名らしいです。
(ああ、社員の方と結構話したのに当時はカウル開けてもらう発想がなかった)


 一方、こちらはTR-1Sのエンジン。なんと外装カバー自体が省かれて存在しません!なので、燃料タンク、コンデンサー冷却器まわりの「内臓」が丸見えです。

 さらに、エンジン前部タンク下あたりがゴチャっと具が詰まっています!なんと、セルモーターやリレーが追加されているのでした!

ハイ!これはつまり、手回し始動のTR-1、セルスターター式のTR-1S、という大きな差異があったという事ですね。気づかなかった・・・


吸気系では、エアクリーナーが外に追いやられたのはバッテリーを積むためと分かりました。また、始動時の作法が若干違う事から少なくともキャブに微細な変更があり、もしかすると本体にもセル始動を前提としたチューニングがされているかもと妄想してしまいます。

 発電系は、元々が作業灯付きの農発なので最初からフライホイールマグネトーを装備、それなりに強化されているかもしれませんが外からは分かりません。

 燃料タンク自体は従来からの「内臓」そのままと思いますがどうでしょう。タンク内がどう仕切られているか分かりませんが、前部キャップに灯油、後部キャップにガソリンの文字がプレスされています。

フライホイール外周のカバーには、セルモーター用の丸い膨らみがぷっくりと追加されています。

佐藤造機
 同様の処理はサトー(佐藤造機)でも見られ、同じくエアクリーナーも外出しなので、この仕様のエンジンもまるごと三菱「かつら」側で設定し供給した物なのでしょう。
いやぁ~TR-1Sでは絶妙にカウルで隠れるので何年も気づきませんでした。

 あと、計器なし計器盤(?)だったTR-1から刷新されてTR-1Sでは回転計と電流計が装備されています。遠くから見分ける際の一番のポイントかもしれません。

・・・・という事です。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ついでに ◆◆◆◆◆◆◆◆◆

上記TR-1Sの初見は、2014年国際農業機械展を見に行った時のオマケでした。
翌日、その会場に行くと井関農機の展示場にこんな大きなパネルがありました。
これはパネルの一部ですが、TR-1が一番大きいじゃないですか!?
2014年は何故か急にTR-1にブームが訪れた!ってな感じがしたものです。

TR-1
当該部アップ。普通こういう工場写真は生産極初期の資料として貴重だったりします。で、この写真のTR-1に形状的な特徴は・・・とくに無い気がしますが、菱形3つの「ヰセキ」マークになってます。ああ、海外仕様が「ISEKI」ロゴなだけなのかな・・・

初のイセキ製4輪トラクターであるTC-10ではイロイロ細部に変化があって興味深いのだけれど、TR-1では既に手慣れた感じといったところですかね。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 以上で終わり。また何か気づいたら追記するかもしれません。

関連リンク
小さすぎるポルシェ型【ヰセキTR-1】