2012年1月6日金曜日

ポテトスピナー2

今回紹介しますコレ、施設の解説板には昭和20年代とアッサリ書いてありましたが、ちょっと気になる事がありました。


 この手の作業機にしては珍しくボディに銘板が残っています。メーカーは「北海道特殊農機具製作所」なのだそう。

調べてみますと、この会社は太平洋戦争の始まる昭和16年に北海道の農機具メーカー4社による企業合同で設立されていて、馬鈴薯堀取機(ポテトスピナー)はその設立年には既に販売していたようです。おそらく合同前の4社のどこかが以前から製造していたのでしょう。

 しかし、この会社も戦局の悪化した昭和19年には23社が合同して「北海道農機具工業株式会社」となり、そして終戦を迎えています。つまり北海道特殊農機具製作所は会社名としては昭和16~19年の戦時中で消えている様です。

正直、これら企業合同時の各社の結びつきや内実がどうなのか分かりませんが、戦後の昭和21年、北海道農機具工業株式会社(解散?)から参加メーカーの幾つかは分離独立し再出発をします。

 さて、最初の昭和16年に出来た北海道特殊農機具製作所の中核メーカーは前回触れた豊平農機製作所(現・スター農機)でして、この豊平農機も戦後は昭和21年から独立再出発しています。両社はトレードマークもほぼ同様の星マークと文字の組み合わせで、前回と今回の実物のディテールも違いが分からないほどソックリ、直系とか本流と言って良い会社だと思います。

う~ん。それでは解説板に書いてあるこの会社が存在しないはずの昭和20年代というは・・・?

戦後の混乱期に豊平農機は「北海道特殊農機具製作所」の名を一時的にでも使用していたのでしょうか。あるいは、別の会社がこの名を引き継いで併存したのでしょうか・・・でも、普通に考えれば、この展示物が戦時中に生産された物の可能性が最も高いです。  

(あ!これは「ポテトスピンナ」という農機具全般の解説であって、この個体ではなく一般的な普及年代を書いているのか・・・そうにちがいないですね!)

 いや、ぶっちゃけ銘板には製造年欄らしきものが有るので年号が記されていればまた話も進むのですが、残念ながら手ぶれ写真で確認ができず・・・う~ん確認しに行きたいです(笑)。余計な物に興味を持つと余計な調べ物が増えて困りますね(笑)

(Ps.後日確認してきましたが製造年号の欄に打刻や文字は無いようでした。残念です。)
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話は変わって・・・
 ポテトスピナー(potato spinner/ポテトスピンナ)は日本ではこの5本の芋掘り鍬(Potato Fork)を使ったタイプが主流のようですが、調べると、このタイプは諸外国では普及していないようなので日本で改良した独自方式のように思えます(前回のカタログ図に北海道農業試験場御考案とありますがコレを言ってるのでしょう・・・)。

ささっとネットで見た限り、欧米は単純にプロペラを回すような物が主のようで、鍬の動きをシミュレートする日本式?は世界的に見れば凝った方式みたいです。

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 ところで、鍬といってもこの装置の専用部品なので、取り外して手作業で使えるような汎用性はありません。そこで根本的な疑問が湧きます。

鍬の杖(ストック)は邪魔だし不要では?

 しかも、ストックは金属のリングで纏めてるだけです。ガチャガチャうるさいし、木部が摩耗するし、ひっかっかって折れたりしないのか?と思ってしまいます。 ↓事実ガッツリ削れてますね(笑)


 考えるに、人が作業する時の「鍬を地面に刺し、手前に引く動き」を機械的にシミュレートするには鍬のフォークが常に下を向くようにする必要があります。つまりフォークの向きを規制する為に上方にストックを延ばしておく必要があるのですね。そして、ストック上部をリングで「軽く束ねる程度」にしておくと、リングの位置を変える事によってフォークのプロファイルが変えられるので、条件にあわせてイモの放擲距離を変えたり出来るらしいのです。

 なんと素晴らしいアイデア!

 さすが北海道農業試験場御考案(なのか?)! ただ、やはり木製の杖は耐久性等の問題があるようで、次第に軽合金製の物が普及していった様です。音は余計うるさくなりそうですが・・・。

そうそう、日本製ポテトスピンナには実は杖を使わない方式も存在しました。これまた結構アイデア物です。サンプルが少ないのですが機会が有ればそれらも紹介したいと思います。

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 今回の個体は、とかち農機具歴史館さんの展示物でした。各種農機具(とくにトラクター作業機)を手広く展示している施設は意外とないので興味のある人は楽しめると思います。
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後日追記


「特農」の北農式馬鈴薯掘取機のカタログが手に入りました。
この場合の北農はメーカーではなく北海道農業試験場の事なんですね。「北農試」が考案したという事で、やはり日本(とくに北海道?)だけで限定的に使われた方式のようです。



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