当ブログのネタとしては場違い感はありますが、放置状態も久しいのでもういいでしょう。私が制作した合法安全な「軽量文鎮」銃模型の一部を紹介してみます。
前説:ブリーチについて…
カートリッジ式の銃は弾丸を装填した後に薬莢の尻を押さえる(閉鎖する)必要がありますが、ごく稀にその押さえ部品「ブリーチブロック(閉鎖器)」等の無い銃が存在しました。そんな珍しい銃をウエスタンデリンジャーを中心に。
なお、銃部品の厳密な用語は分からんのです。雰囲気で察してくださいまし。
造形的な事は後述。
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レミントン・エリオット・シングルショット・デリンジャー
有名なダブルバレルデリンジャーの設計者ウイリアム・エリオットによる単発デリンジャー。 1867ー1888
ダブルバレルもシングルショットもグリップ前縁の曲線はほぼ同じで握りやすく、しかも他社にはない抜群のデザインで設計者の優秀さを感じます。
そして、41口径という大口径では極めて珍しいブリーチブロック(薬莢を押さえる閉鎖部品)が無い独特な機構の銃です。
発砲時に「後退する薬莢」を「後退しないハンマー」で受け止めれば単体のブリーチブロックは要らないのでは?という机上の空論を実体化した感じで、大丈夫か?と思ってしまいます。
ハンマーの回転軸を後方に置くと、ハンマーの打撃部の動きは上下動に近くなり、薬莢の後退に付き合わずに受け止めるられるという理屈です。原理上、完全閉鎖は出来ないので、「飛び出した薬莢をハンマーにぶつける」形になっています。
万一ハンマーが戻ろうとしてもオートマチック銃のジャムみたいに薬莢が引っかかります。それでいて意外と装填と排莢はしやすいとか、作ってみての気づきが多かったです。これこそスクラッチの醍醐味といったところ。
発砲の衝撃をハンマーが直接的に受ける為にハンマーピンが極太なのも個人的に萌えポイント・・・ってな事を書いていて、ハンマーピンが衝撃を一手に引き受ける云々はフロベルの室内射的銃にも存在した記憶が。詳細は不明ですが、もしかするとアイデアは有ったけれど普及しなかった感じかもしれません。(1作目)
レミントン ベストポケット ピストル No.1
これもブリーチブロックなしですが、上記のエリオットとは真逆でハンマー回転軸が前方にあるため「下から上にアッパーで叩くハンマー」構造です。もっともこっちの方が少し前に出たモデルですけれど。
洋ノコギリに似たスタイルから「ソーハンドル」の通称で有名なシリーズです。実はこれもエリオットさんのシングルショットなので外観を表すこの通称の方が好ましいです。
ちなみにソーハンドルには3サイズがあり、ブリーチブロックが無いのはこの最小の22口径モデルだけで、他はレミントン得意の「ローリングブロック」を採用しています。
実のところ41口径のNo.3あたりを「デリンジャーにローリングブロックを組み込んだ例」として手にしたかったと少々後悔していて、そっちもいつか作りたいと思ってます。(14作目)
J.C. テリーの特許出願中デリンジャー
基本的には上記ソーハンドルNo.1のパクリと思われます。現代のブルパップ式ライフルに似てコンパクトでありながら銃身長を稼げるデザインではあります。そして同じくSF的な奇妙さもあります。
特徴は後退した薬莢が引っかかる工夫であろうハンマー正面に3本の溝が掘ってある事くらいでしょうか。うーん、それで特許を出願したのでしょうかね。
で、J.C. テリーさんって誰?ってな感じの無名メーカーですが、意外と売れた様で現存数は多い印象です。ただどの個体の画像を見ても「特許出願中」の刻印が「特許取得日」に変わった様子はありません。
模型はソーハンドルと同じくハンマーのみ稼働にしました。ただ、この設計でバネ無しにするとハンマーが自然に落ちてくるのが悩みです。(2作目)
アイバー・ジョンソン ジェム
これまたブリーチ無し繋がりですが、実弾を発射出来ないブランクピストル「=空砲銃」でして、大きな反動は無いため普通のハンマー構造で済んでいます(ハンマーピンがハンマーの下にある)。
西部劇でSAA等を空に向けてヒャッハーと撃ちまくるシーンがありますが、祝賀用途で爆竹みたいに実銃を使うのは問題あるので次第に空砲銃が売られるようになったようです。しらんけど。
これは1890年代の西部開拓時代終焉後の製品で、何となく室内での使用を意識したデザインっぽく感じます。オーナーの中には.22ショートの実弾を発射するように改造して事故を起こす例も多かったそう。 シンプルな全くの無可動モデルとして作ったので、4丁一気に完成したり、塗装の練習台になったりと一番多く出力しました(3作目)
ボス ブランクピストル
ブリーチなしブランクガン繋がりで謎の銃「ボス」を。メーカー名は不明で、どうも宝石卸商が配布云々の解説があるので顧客むけのオマケ的な物かもしれません。S&Wのホーレス・スミスの息子が製造したそう。1870年代。
見ての通り普段はトリガーがなく、ハンマーコック状態でトリガーが露出するタイプですが、一部の古式銃やテキサスパターソン的な飛び出すギミックではない様です。
どうやらハンマーとトリガーが一体部品!で、シーソー型の電源スイッチみたいにパチンパチンと交互に弾く感じなのかと想像します。内部構造は分かりませんがトリガー兼ハンマー、ピン、バネの部品3点だけで済みそうなシステムです。
フォルムも独特ですが、独立記念日の祝賀用なのか1776(アメリカ独立年) の刻印は有るもののシリアルナンバーがないという妙な銃です。
曲面構成の微妙なラインなのでCADでツギハギだらけの基本形を作り出力品を手作業で形を整えました。同じ物は作れません。(8作目)
レミントン・ライダー・マガジン・ピストル
デリンジャーサイズでありながらチューブマガジンの連発銃という脅威のメカニズム、しかもローリングブロックの応用的なレバーアクションの組み合わせです。
また、弾丸の.32エクストラショートはパームピストル「プロテクター」とコレしか採用していないという何重にも興味深いモデルです。ジョセフ・ライダーの設計、1871~1888年製造。
上部の大小のレバーはブリーチブロック(大)とハンマー(小)で、大きいレバーを(大小一緒に)引いてハンマーコック、大きいレバーを戻して閉鎖します。この操作で同時にマガジンからの装填と排莢も行っているわけです。
このブリーチブロックはハンマーと同軸なので本来のローリングブロックとは違い、レバーを引く際に上から押し下げでロック解除する仕組みになっているようです。普通のハンマースパーなんかと形が違うのは押しつける用途が有るからなんですね。
とにかく精密機械的で正直全てを理解出来ていません。機構的に面白いのでハートフォードさんあたりに期待したいけれどモデルガン化はコスト的に無理でしょうね。(10作目)
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いずれも3Dプリントを活用したフルスクラッチです。
全て機関部分がムクの無可動モデルなので発火機能も発射機能も無いため、例えば輪ゴム銃よりも安全なディスプレイ模型です。
素材はUVレジンで衝撃に脆い物です。銃口は見える位置で閉塞されています。
設計のCADはRhino7、3DプリンタはMars2、レジンは主にsiraya-tech fastを使用しています。
XYが0.05ミリの古いマシンでも刻印等の細かいディテールは意外と出るのですが、銃身等の微妙なテーパーでは段差が気になるので最新マシンが欲しいところ。
このところSNSも控えて黙々と20種以上作ったので専用のブログでも作ろうかとも思いつつ、今は「発表を前提としない模型作りが楽しい」域に入っているので悩ましいところ。
で、今回はダイジェスト的に書いてみました。