2012年1月13日金曜日

南極のトラクター ファーガソンTEA-20 「スー」

トラクター、雪上車、南極、ミニチュア・・・今回は当ブログ的には最高の4色丼です(笑)

Ferguson TEA-20 "SUE"(1958)Universal Hobbies 1/16
ファーガソンTEA-20 SUE ユニバーサルホビー
Ferguson TEA-20 "SUE"(1958)Universal Hobbies 1/16
驚きの実車

 人類初のエベレスト登頂を成功させた冒険家、サー・エドモンド・ヒラリーが南極で使用したトラクター「SUE」。

 ヒラリーはエベレスト登頂から僅か4年半後、イギリス連邦・南極大陸横断調査隊にニュージーランド隊の隊長として参加、本隊への補給等を担当する支援隊でありながら3台のファーガソンTEA-20でトラクターによる南極点初到達を記録しました(1958年1月3日)。これは今から100年も前の、あのアムンゼン隊とスコット隊に次ぐ、46年もの間の開いた3番目の陸路による南極点到達でもありました。

 ちなみに、悲劇のスコット隊は、謎の1911(明治44!)年製装軌雪上車が使い物にならなかった事が誤算の始まりですし、1914年発のシャクルトンの大英帝国南極横断探検隊は鉄車輪トラクターを積んでいたものの座礁と1年8カ月の漂流で上陸出来ずに終わり、つまり、このヒラリー支援隊はトラクターどころか乗用機械による初到達と言う事にもなります。

それについてヒラリー曰わく 「ファーガソンは、1250マイル(2000km)にも及ぶ、氷、雪、クレバス、柔らかな新雪およびブリザードの中を、南極点到達の最初の乗り物になるよう私たちを仕向けました」

 この粗末な覆いしかないオープントップのトラクターで南極を2000kmも走行とは我々の想像を絶する冒険ですが、ヒラリーにしてみればエベレスト登頂の過酷さと比べれば随分マシだったようです。

 なお、ヒラリーに「出し抜かれ」てしまった本隊のフックス隊はというと、目的である史上初の大陸横断を3月に完成するのですが、その途中、南極点到達はヒラリーより16日遅れ(1月19日)で記録しています。こちらが使用したのはアメリカ製の雪上車タッカー・スノーキャットでした。

 それにしても何故だ!この偉業まるで知られていないではないか!と思ってしまいますが・・・

 実は、この年の南極といえば、日本では全く違うストーリーが語られます。翌2月、日本の第2次観測隊は悪天候で昭和基地に辿り着けず、この年の越冬隊は不成立、第1次越冬隊員を収容する事は出来たもののタロ・ジロたちカラフト犬15頭を昭和基地に置いて帰っているのでした。 ※この当時の日本の雪上車KD20-2Tについて


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ユニバーサルホビー1/16

 ファギー(ファーガソン)のスーちゃん、さすがに実車が3台とも現存しているようで、いくつかの画像をネットで観ることが出来ます。 実際は5台が南極に持ち込まれたらしく展示車には未到達車も混ざっているようですが、それら現存車や記録写真をみると、防寒カバーの掛け方やライトの有無などがその時々で変容している事がわかります。南極到達時の記念車写真ではヒラリー車はライト1個で、他の2台はライトなしだったりしますから、モデルは新品のプレーンな状態を再現した物という事でしょう。

色については違和感がありました。1958年という時期は、既に新型のファーガソンFE-35が出ていて、マッセイ・ハリスと合併しているものの色はまだ赤くない微妙な頃のはずです(このあたりは旧ブログに書きました

・・・と書いていたのですが、この事に触れた記事を見つけました。ヒラリー隊のファギーは雪中で目立つように特別に赤く塗られた物だったそうで、すぐ後にメーカー生産車が赤に変わった事とは別案件だったようです。なお、実車はボンネット横にFergusonと黄色く書かれていますが、このミニチュアでは何故か再現されていません。

 このユニバーサル・ホビーからは当然ノーマルのTE-20も出ていますが、これと比べるとスーは「ファーガソンシステム」油圧3点リンクが実車同様に省かれたくらいで、あとはカスタム装備を山盛りにしたような充実の内容になっています。元々シンプルすぎて買う気にならないトラクター(笑)ですから、これだけパーツが増えて同じ値段なのは非常にお買い得な感じがあります。ただし、ゴムキャタピラが細くてフニャフニャなので将来の材質劣化がとても心配ではありますが・・・。

なお、この6輪フルトラックの足回りは必ずしも南極スペシャルではなく通常のオプション装備として市販されていた様で、後4輪にだけキャタピラを巻いた「ハーフトラック」仕様が当時の日本版カタログ(チラシ)に載っています。ニコイチで作れなくもない・・・っとまぁ、そういったタイプも含めて(値段的に買える)1/43サイズでのバリエーション展開を期待したいものです。



あと、このモデルは写真で見るとライトの中が黒くて変に見えるのですが、実際に見ると中に二重にライトが入っている構造らしいので(つまり中のライトが黒い外装)、構造を知るとそう変でもありません。 画像を拡大して見るとわかるのですが。


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写真
 このミニチュアは半年以上前に発売されていて少し後に買いました。ただ、ネットで画像を検索すると、みんなタミヤのMMみたいに背景がないメーカー写真で、それはつまらないので雪景色になってから写真を撮ろうと考えていました。

が、イザやるとなると大変で(笑)。冬は駐車できる場所が極端に減り、とくに景色の良い郊外では絶望的です。日照時間も少なく、天気も良く変わります。撮った写真を見たら30分ほどで背景が青空から寒々しい曇り空に変わっていました(まるでスターウォーズ/帝国の逆襲のAT-ATのシーンだw)。

ラッキーな事に郊外の公園に、歩くスキー用でしょうか、スノーモービルが板を牽いて整地したばかりの道があったので、重い1/16でも埋まらない程度のフラットな雪面で撮る事ができました。


 雪にまみれになりながら膝をついてオモチャを撮ってるオッサン・・・通行人にジロジロ見られましたが、「近づくな!雪面に足跡を付けられたかなわない!」という空気は出せていたと思います(笑)

●1/16トラクター関連
着衣トラクター2 ジョンディア 720
南極のトラクター ファーガソンTEA-20「SUE」
UH フォードソン F 1917 (旧ブログ)


●ファーガソン関連1/16 南極のファーガソンTEA-20 SUE
農機ミニチュアのショップ!(1/43 ファーガソンFE-35 TEA-20 旧ブログ)
突然ですが・・・。 マッセイ・ファーガソン 35(旧ブログ)

●他・実車関連
南極の雪上車 KD20-2T
●ファーガソンTE-20(系)実車の写真。前編

2012年1月8日日曜日

アエロサンNKL-26 10年来の夢!

10年前にホームページ(ひとり言21)や掲示板で盛り上がったアレが・・・(鼻血ブー!)

 きのう今年初めて模型店に行きましたが、目的のキットはどれも売れてしまったようで何も見あたりませんでした。昨年末には気になる物が幾つか出ていた筈なんですが・・・。ま、それなら三角ビートルかスペースウルフでも買って帰ろうかな~と思っていたら一個だけこんなのが有りました!


 おお!1/35のアエロサンNKL-26だ!!ぶっちゃけコレがキット化されていた事も知らなくて超驚きでした! 個人的にはトランペッター製品はスケールモデル的な意味で微妙な印象があるのですが、多分コレなら簡単な形だし問題ないでしょう。今時のキットですのでパーツレベルで見た範囲ではモールドにもキレがあって非常に出来が良さそうです。
(※後日追記、ボディライン等やはり少し問題があるとかなんとか・・・)

 なお、このプロペラソリことアエロサンの1/35インジェクション・キットは、より小型のRF-8タイプが既に同社とヴィジョンモデルから出ているようです。私は某模型店のサイトでカートに入れた記憶は有るのですが・・・どうも購入はしなかったようで・・・詳細に見た記憶がないです(相当ボケとるな)。

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野望・・・
 実は10年前からずっと考えていた事があります。ずばり、ラジコン化。かつては20万円くらいの星形空冷5気筒のラジコン用エンジンに憧れていたので、 エンジンありきで大型モデルのスクラッチを妄想していました。←いつもの「思うだけ」です。

 しかしこの間に、ラジコン・システムの小型化、低価格化、高性能化が驚くほど進んでいて、手のひらに載るヘリコプターが安い物は数千円で買える時代になりました。また、主にウルトラライトプレーン自作派の方々のニーズもあってユニットのレベルでの入手も出来るようになってきました。
(マニュアル的な物は無くて組む際は自己責任ですが。あと基本的に空専用のを陸に使う事は厳禁)

 で、以前 RF-8が1/35で出たときに電動ラジコンシステムの搭載を考え、「フィギュアを上半身だけにしても無理かなぁ」とキットも見ないで思っていたのですが(汗)、今回の比較的大きい箱形ボディのNKL-26であれば十分に搭載可能に思えました。

 どれどれ・・・

 あくまでも参考例ですが、超軽量サーボ、1セルのリポ・バッテリー、2.4GHz6ch受信機でこのサイズ。コレにESCと電源スイッチが加わる程度なので本体に搭載する機器は余裕を持って積めそうです。

 プロペラを回すモーターに減速ギアは不要だと思うので(ダメかしら?)それで良ければボディ外部の星型エンジン内に楽に組み込めそうです。モーターとサーボ1個の2chしか使わないので送受信機のチャンネルが余る場合は、銃座をフィギュアごと回転させたり、ライトを点灯させたり、何ならクラッペをパタパタ動かしたりと蛇足アクションも楽しめそう。

 ただし、足回りはスキッド部以外のほぼ全部を金属にする必要が有りそうだし、ステアリング機構(イマイチ良くわからない)などはスケール感を損なわず再現するのは難しそう。モーターも含め実際に動かすには実験や調整で面倒かもしれません。でも基本、ラジコン化の難易度的には高くない方だと思います。


・・・という事で、誰かやってみてはいかがでしょう?(って、おい!)

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後日、結局、自分で試してみました。 続く。

3アエロサンRC化計画 雪上走行テスト
2ルナ・ローバーでアエロサン
1アエロサンNKL-26 10年来の夢!

2012年1月6日金曜日

ポテトスピナー2

今回紹介しますコレ、施設の解説板には昭和20年代とアッサリ書いてありましたが、ちょっと気になる事がありました。


 この手の作業機にしては珍しくボディに銘板が残っています。メーカーは「北海道特殊農機具製作所」なのだそう。

調べてみますと、この会社は太平洋戦争の始まる昭和16年に北海道の農機具メーカー4社による企業合同で設立されていて、馬鈴薯堀取機(ポテトスピナー)はその設立年には既に販売していたようです。おそらく合同前の4社のどこかが以前から製造していたのでしょう。

 しかし、この会社も戦局の悪化した昭和19年には23社が合同して「北海道農機具工業株式会社」となり、そして終戦を迎えています。つまり北海道特殊農機具製作所は会社名としては昭和16~19年の戦時中で消えている様です。

正直、これら企業合同時の各社の結びつきや内実がどうなのか分かりませんが、戦後の昭和21年、北海道農機具工業株式会社(解散?)から参加メーカーの幾つかは分離独立し再出発をします。

 さて、最初の昭和16年に出来た北海道特殊農機具製作所の中核メーカーは前回触れた豊平農機製作所(現・スター農機)でして、この豊平農機も戦後は昭和21年から独立再出発しています。両社はトレードマークもほぼ同様の星マークと文字の組み合わせで、前回と今回の実物のディテールも違いが分からないほどソックリ、直系とか本流と言って良い会社だと思います。

う~ん。それでは解説板に書いてあるこの会社が存在しないはずの昭和20年代というは・・・?

戦後の混乱期に豊平農機は「北海道特殊農機具製作所」の名を一時的にでも使用していたのでしょうか。あるいは、別の会社がこの名を引き継いで併存したのでしょうか・・・でも、普通に考えれば、この展示物が戦時中に生産された物の可能性が最も高いです。  

(あ!これは「ポテトスピンナ」という農機具全般の解説であって、この個体ではなく一般的な普及年代を書いているのか・・・そうにちがいないですね!)

 いや、ぶっちゃけ銘板には製造年欄らしきものが有るので年号が記されていればまた話も進むのですが、残念ながら手ぶれ写真で確認ができず・・・う~ん確認しに行きたいです(笑)。余計な物に興味を持つと余計な調べ物が増えて困りますね(笑)

(Ps.後日確認してきましたが製造年号の欄に打刻や文字は無いようでした。残念です。)
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話は変わって・・・
 ポテトスピナー(potato spinner/ポテトスピンナ)は日本ではこの5本の芋掘り鍬(Potato Fork)を使ったタイプが主流のようですが、調べると、このタイプは諸外国では普及していないようなので日本で改良した独自方式のように思えます(前回のカタログ図に北海道農業試験場御考案とありますがコレを言ってるのでしょう・・・)。

ささっとネットで見た限り、欧米は単純にプロペラを回すような物が主のようで、鍬の動きをシミュレートする日本式?は世界的に見れば凝った方式みたいです。

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 ところで、鍬といってもこの装置の専用部品なので、取り外して手作業で使えるような汎用性はありません。そこで根本的な疑問が湧きます。

鍬の杖(ストック)は邪魔だし不要では?

 しかも、ストックは金属のリングで纏めてるだけです。ガチャガチャうるさいし、木部が摩耗するし、ひっかっかって折れたりしないのか?と思ってしまいます。 ↓事実ガッツリ削れてますね(笑)


 考えるに、人が作業する時の「鍬を地面に刺し、手前に引く動き」を機械的にシミュレートするには鍬のフォークが常に下を向くようにする必要があります。つまりフォークの向きを規制する為に上方にストックを延ばしておく必要があるのですね。そして、ストック上部をリングで「軽く束ねる程度」にしておくと、リングの位置を変える事によってフォークのプロファイルが変えられるので、条件にあわせてイモの放擲距離を変えたり出来るらしいのです。

 なんと素晴らしいアイデア!

 さすが北海道農業試験場御考案(なのか?)! ただ、やはり木製の杖は耐久性等の問題があるようで、次第に軽合金製の物が普及していった様です。音は余計うるさくなりそうですが・・・。

そうそう、日本製ポテトスピンナには実は杖を使わない方式も存在しました。これまた結構アイデア物です。サンプルが少ないのですが機会が有ればそれらも紹介したいと思います。

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 今回の個体は、とかち農機具歴史館さんの展示物でした。各種農機具(とくにトラクター作業機)を手広く展示している施設は意外とないので興味のある人は楽しめると思います。
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後日追記


「特農」の北農式馬鈴薯掘取機のカタログが手に入りました。
この場合の北農はメーカーではなく北海道農業試験場の事なんですね。「北農試」が考案したという事で、やはり日本(とくに北海道?)だけで限定的に使われた方式のようです。



関連リンク
ポテトスピナー2
ポテトスピナー!