前回【露製1つ目小僧】の時に「キューベルワーゲンの代燃車をチョロQ化したかのような端正なスタイル」と書いたのがこの2代目SMZ(セルプホフ・オートバイ工場)のS-3Aです。どう?格好いいっしょ?
春、何とか雪景色を撮れたものの、足元がざらめ雪で悲しい(笑) |
※ ロシアではキャビンスクーターなどの超小型車をмотоколяска=モトカリヤスカ(自動乳母車) と言うようですが、本国では今回取り上げる2台がメジャーで、モトカリヤスカといえば一般的にコレの事を指すようです。
(「あの女優はゴーリキィすか?それともモトカリヤすか?」で記憶w)
◆◆◆◆SMZ S-3A (СМЗ-С-3А)◆◆◆◆
さて、前回も長々書いたので、今回は実車に絞って書いていきます・・・
●ボディ セパレートフレームを持たない『鋼管スペースフレームにスチールパネル貼り』というスーパースポーツカーか何か?というようなモノコック的なボディ構造です。ただしバードケージと言うような立派な鋼管フレームではなく、私には竹ひごに紙を貼ったゴム動力飛行機のような、パネルを縁取って補強した物というイメージがしました(もしかすると予めフレームを組むのではなく、先にパネル毎に鋼管で補強した物を組んでたりして?)。こんな手間のかかる製造法では、この種の車に求められる量産性は低く、そのくせ車体重量は425kgとサイズの割に軽くはなく、やはりこのボディ構造は大きな欠点の一つとされているようです。
●エンジン 後部にバイク用の単気筒2サイクル346cc・8馬力エンジンИж-49型)を積んでいます。これはタミヤが1/35でキット化したDKW・NZ350バイクの戦後ソ連版のエンジンで、強制空冷化して前後逆向きに搭載した物なのでした。変速機まで一体のバイクエンジンをデファレンシャルケースの上にレイアウトし、その別体のデフへはチェーンで動力を繋いでいます。バイクエンジンの流線型サイドカバーを切り欠いてドライブチェーンとファンベルトをスプロケットから繋いでいる姿は微笑ましいくらい素直な流用エンジンです。
●サス回り 後輪はコイルスプリングを左右それぞれ2本を使ったスイングアクスル、前輪はワーゲン・ビートル(ポルシェ)風のトレーリングアーム+横置きトーションバー。生意気にも4輪独立懸架です。ただし、短そうなサスストロークと小径ホイールでは走破能力は低そうにみえます。実際のところ、ロシアの荒野を走る車ではなく、身体障害者向け近距離移動用なので石畳などに追従出来れば良いのかなと思います。当初(1958~62)の古臭い摩擦式ダンパーは油圧テレスコピック型に変更(1962~70))されました。
後ろ姿も完璧?後継の試作車たちにはノッチが付いてこの味は失われます。 |
●操作系 バリエーションはあるのですが、当初から作られた基本型はペダルがなく両手だけで運転できる仕様のようです。先に三輪車を作ったのもバーハンドルの方が各種手元操作向きだったからかもしれません。そして四輪化とともに丸ハンドルになっています。ハンドル裏側にF-1のパドルシフトのように手前に引くレバー(?)と、ハンドル表側に伸びた親指で押すレバー(?)の2種がコラム左右に付いています。合計で4本になりますが左右は連関しているようにも見えます。通常のシフトレバーらしき物がフロアから2本伸びているので、変速自体はハンドルから右手を離して行う筈です。
ちなみに、YouTubeでмотоколяскаを検索すると幾つか動画がありますが運転操作はイマイチ理解できませんでした。バリエーションモデルが多いのか、後に改造された物なのか動画ではペダル付きが多いようです。
四輪と三輪。ノーズの小さなトランクやスカットルの3本プレスも同じデザイン。 |
●デザイン 三輪車の直接の後継モデルで、たしかに両者を並べて観ると前輪とライトを2つにしただけの正常進化に見えます。個人的には、かつて一目惚れしたこのフォルムが、実は積極的に「デザイン」されたものではなく、半ば成り行き上こうなった物と確認出来て感激しました。
そして、有りがちな事ですが、このモデル以降はグレードアップを思わせる「デザイン」を取り入れ始めてアンバランスな姿になって行きます。幸いどれも試作止まりで量産された物はなかったのですが・・・
◆◆◆◆ SMZ-S3D(СМЗ-СЗД)◆◆◆◆
・・・やがて3代目が登場します。
個人的な好みは置いておいて、確かにC3Aのデザインは登場した58年でも垂れた後部やフラッシュ・サイド化されていないボディは新しいとは言えず、まして70年ともなれば化石のようなデザインだったと言えます。当時はまだビートルや2CVがありましたがあれは殿堂入り的な別格の車でしすし。
そこでC3A後継候補の試作車では、後部にノッチを付けたものや、ボディ全体を流麗?なスタイルに一変した物など、3BOXの小型車風のスタイルか試みられたのですが・・・
が、何がどうしたのか、採用されたのは、すっかりデザインを諦めてしまったかのようなコレです(笑)
どうしてこうなった!?
まるで軍用車のような補強リブだらけのプレスボディ、側面パネルなどは溶接跡で縁取りされている始末。西側への見栄などは一切捨てて、数を揃えれば文句ないだろう的な物に成り下がってしまいました。
ただし、これほどの直線と平面で構成されたデザインを、ワーゲン・ゴルフ(1974年)よりも前に採用していた事はトレンドを先取りしていた・・・なんて書いてて虚しくなるほどやっぱりヒドイ(笑)
なお、ボディだけではなくリア・サスペンションがフィアット風に、エンジンも大きい物に一新されている様ですが、個人的にはもうどうでもよい気がします。もう調べる気力が出ません(笑)
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今回も動画にしてみました。
http://youtu.be/LtVV3YYwjIw
何枚も画像を貼るよりスライドショーの方が軽くて良いと思うのですが、スマホ対応に問題が有るようで踏み切れません・・・。
ところで・・・
ターンテーブルで回っているS3Dの姿をじっと眺めていて、何か妙な既視感を感じました。
わかった! ウルトラ警備隊のポインターだ!
いやいや、比べると何一つ似ていない!マニアに言ったらブン殴られる!
でも、何故かそう思ったのだから仕方がないのです。
以来、少しこの形が素敵に思えて来てるのですが・・・それだけは認めたくない自分がいます(笑)