見ての通りポルシェやヰセキTBシリーズの子分にあたる最小モデルで、まるで手作りの一品物のようなマスコット風味です。超カワイイ!
ISEKI TR-1 汎用エンジンとベルト駆動の「乗用耕耘機」 |
(TB…かつて井関農機はポルシェ・ディーゼル社製の3つの大型モデルを輸入販売しつつ日本の国情に合った小型モデルをポルシェと技術提携して開発しました。それがポルシェのデザインを持つTBシリーズです。時期的には1963年にドイツ本国のポルシェ・ディーゼルがトラクター生産を終了する前後にポルシェの輸入(1962 ~66年)とTBの生産を始めているよう《←今回初めて気づいて混乱中です!》。ポルシェ輸入終了後にチェコのゼトアを輸入販売するのですが、その時期にもTB17と23、そしてTR-1Sがポルシェ同様のデザインのまま数年販売されていたようです。)
斜め後ろから見ると特にイイネ!カウル後部も見事な造形。本当は前輪の車軸をもうすこし前にして大きなタイヤにすれば更に格好良くなったでしょうけれどね。
TBシリーズで最も大きくてポピュラーなTB-20(と23)は完成形と言いたくなる程バランス良いスタイルですが、TB-17>TB-15>TR-1と、小さいモデルになるほどプロポーションが崩れる感じが面白く愛しいです。
後部。乗用耕耘機タイプはロータリーとワンセットが普通なので、こうして車体後部が見れるとちょっと嬉しいですね(?) 一瞬PTOはどこだ?と思ったけれど横向きにスプラインシャフトが出ていました。中身は全部横軸のギアトレーンなのでしょう。どこも色が剥がれていないのでオールペンしてからは働いてないようです。
TBシリーズと最も異なって見えるエンジン右側。始動ハンドル付きのフライホイールが目立っています。よく考えるとこの方式は古典的な農発そのもので、何か古臭いような新鮮なような不思議な気がしました。ここの奥の方には始動が困難の時にはガソリンを使うよう指示するラベルがありました。ちなみに水冷4ストの灯油エンジンです。
この外観をした農用発動機は複数サイズが有るのですが、TR-1は最大14psモデルなのでヰセキG10Aからライトを取り除いた物なのでしょう。
下の写真がそのG10Aで、824cc 最大出力14ps 常用出力10ps/2000rpm 117kg 細部のディテールも一致しています。
なお、この農発は三菱「かつら」系のOEM製品らしく見た目もカタログデータも三菱K10と同じです。
(後日追記、下画像)三菱かつらエンジンK10Aを見つけました。三菱重工業製、赤い外装パネル部分の造形がG10Aと少し違いますが機能部品は同一と想像します。
…という事でこのK10を積む14ps乗用耕耘機「ミツビシR105」と「ヰセキTR-1」は同クラスの兄弟のような存在なのですね。車載型はフライホイール外縁に巻き込み防止用と思われるガードが付くのも同じです。
ちなみに、ミツビシ、サトー、スズエあたりが同系エンジンの2輪や4輪の耕耘機を販売していて、中には車体丸ごと同じ型かもしれない機種も見受けられます。しかし、このTR-1の場合はエンジンの供給を受けただけで車体はヰセキで作った筈です。
う~ん。やっぱりこの完璧なミニチュア版カウルの出来に惚れ惚れしてしまいますね。
ポルシェとTBの全モデルは強制空冷式エンジンですが、水冷のTR-1では冷却器がエンジン後部の横向きに装備されるのでグリルは全く必要ありません。
つまりデザインだけのダミーグリルなのです。
いや、それどころか、元々このエンジンはライト付きの農発なので、グリルだけではなくカウル自体が邪魔なくらいです。しかしヰセキはわざわざコストを掛けてポルシェ譲りのデザインを踏襲し、商品展開の上から下まで統一デザインで揃えたようです。
日本企業がCI (コーポレート・アイデンティティ)をブームのように取り入れる遥か以前に、トラクター界ではこんな物が存在したんだなぁとシミジミ思ってしまいます。とある大自動車メーカーなど今だに他社のデザインをつまみ食いしているイメージがあるのですがね・・・
まぁ、とにかく素敵な農機で、またどこかで見かけたらじっくり観察したいものです。
◆初期のトラクターとは違い60年代中期の乗用耕耘機なので全国レベルでの現存数は多いのかもしれません。
◆場所は「旭川 ホクレン油機サービス」さん。←クリックでグーグル・ストリート上で存在を確認できます。(追記)無くなりました。
さて、新しい事が分かれば追記するとして、いくつかを備忘録的に。
Tractor & Construction Plant Wiki さんから。
ここは古くからウチ以外に検索ヒットする唯一のページでした。
てっきりライトの位置が欧州っぽくて海外仕様かと思っていましたが、今回の個体はズバリこの形でしたね。
カウル横のデカール文字「ISEKI TR-1」は斜体のように見えるので、そこが今回の発見車両との唯一の違いといえるかも知れません(発見車はオールペンながらもデカール部分は塗り残してありました) 。今回の車体製造ナンバーが500番台だったのでこのタイプが比較的初期としても納得です。
【TR-1S】
一方コチラは9年前にウチのHPで「孫ポルシェ」として少し触れた時の画像。TR-1に「S」というサブタイプ名が付いています。
ヘッドライトの位置が「本来あるべき場所」にあるので非常に格好良く、エンジン吸気口もポルシェやTBに倣ったのか外に出ています。搭載エンジンの名は「G10T」ですが元々そうだったか変更があったかは勉強不足につき不明。
作業機だけだった菱型3個の「ヰ・セ・キ」マークが本体側面にも使われ同時期のゼトアやTB-17やTB-23と同様になりました。
当初はコチラのほうがミニチュア的再現度が高い上に、このライトの位置だとベルト作業の邪魔になるので「対策前」の初期のモデルなのかと思っていました。
この時期のミニカタログにはTR-1S、TR-1L、TR-1LDの3タイプが記載されていますが、この時点で素の「TR-1」が無いので後継モデルの位置づけなのだと思います。
イセキ TR-1(S)の続報
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ぐぬぬ・・・TR-1L |
かかか…格好わるいいいい!!
あの惚れ惚れするTB譲りのカウル「だけ」を無くしたような型・・・でも他社ではこれが普通なんですよね。「性能が全て」の世界とは言えやっぱりエンジンをただ積むだけではつまらないと思うのです。
TR-1Lは「一般農用エンジン」を別途用意するモデルですので、当然カウルを諦めなければなりませんでした。エンジンまわり以外は同時期のTR-1Sと同じと思われます。
この画像は販売末期に近いと思われる1968年頃のTR-1L単体のカタログの物で、他の2バリエーション、TR-1S(水冷灯油)、1LD(空冷ディーゼル)は存在していたかもしれませんがリスト等は載っていませんでした。
なお、TR-1LDではKD1100Sエンジンが搭載されるのですが、この写真のエンジンがKD1100そのものかもしれません。この車体とエンジンとセットで買えばTR-1LD仕様になるので途中から設定しなくなったのかもしれません。
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